"国会図書館個人送信で読みたい図書紹介

さて 19 日から表題のサービスが始まりました。
正確には 18 日の午後三時には始まっていましたね。
このサービスは それまで国会図書館や 図書館送信に対応した設備のある図書館のみで閲覧できた図書を 自宅でも閲覧することが出来るというサービスで 国会図書館に登録している人であれば可能となります。
まだ登録していない人は 今すぐここから登録しようね!

でもおすすめは 朝一番に国会図書館まで行って登録することだ。登録が終われば直ぐに 新館ゲートから国会図書館の世界に入ることが出来る。一日中読みまくりましょう!

さてこの記事では 私が選ぶおすすめ図書の紹介です。
研究始めて三年。どのような資料を読んできたのか ぜひ参考にしてください。

2022-05-24

和歌山県史中世

さて大晦日の記事にて 私は大和豊臣家の家中について軽く書きましたが そのベースとなっているのが和歌山県史中世の第二節 豊臣政権と紀州 であります。

大和豊臣家を知るに 最も手っ取り早く最も良質である図書こそ この一冊であることは明白です。
勿論 この完全では無い事も確かでありますが そこは私が追々纏めていくので御安心なさい。

名張市史料集 第2輯 (名張藤堂家文書)

お馴染み藤堂高吉ですが 彼を知る上で基礎的な史料となるのが此方 藤堂宮内少輔高吉公一代之記 であります。
然るにこの資料を読まずして 高吉を語るなかれ と言いたいのである。

中でも大和中納言の死因を 疱瘡 と記した二次史料は この史料が初では無いか。没した場所こそ十津川では無く 大坂と誤りはあるが 十分に有意義な記述である。
今現在駒井日記では 高虎の報せにより秀保卿の細かい病状が記録されており 名張藤堂家の編纂史料を裏付けることが出来るという訳だ。

また高吉存命時にも発生していた御家騒動は 必見ですぞ。

久居市史上巻

私が津で暮らしていた頃 そこには久居市があった。年がばれる。
そして亡き祖父が矯正店で買ってくれた鉢は 久居農林ブースの シクラメン であった。
あのシクラメンは 祖父が亡くなると後を追うように 病で枯れてしまった。今も救えなかったのを後悔しております。

このように私は久居に思い入れがあるわけだが このような生き方になって 再び久居との縁に恵まれるとは思いもしなかった。
それはやはり 藤堂八座家 の存在が大きい。

久居市史上巻で見るべきものは 久居の武家屋敷 として紹介される写真であるが これは安政期に建てられた八座家屋敷だ。

藤堂家 久居両藩を調べる中で 私は 津市に武家屋敷の類は遺されていない という前提を持っていたので 逆に久居市史が編纂された昭和 40 年代に武家屋敷 それも調査対象の藤堂八座の屋敷が遺されていた事に衝撃的であった。

政治史の観点でも 久居藩の苦労は興味深いものである。

現高島市域の旧自治体史

現段階で 何処でも閲覧できるのは高島町史 新旭町誌 マキノ町誌の三冊に限られる。

西島太郎先生の論考以前の編纂で 現在の説とそぐわない箇所であったり 信澄 表記であったりするが 高島市が如何になり立ったのかを知るには抜群の史料と言って良い。

他の 朽木村史 今津町史 は刊行が新しいため 他で実際の刊行物を読む必要がある。
また将来的には 高島市史 の編纂も行われよう。その際は いっちょ噛みしたい野心はある。

茶道古典全集第7・第8・第9巻

最も読むべきは 茶道古典全集 であるが その中でも 天王寺屋会記 が載る 7 8 松屋会記 が載る 9 を強く勧めたい。

簡単に言えば天王寺屋会記は津田宗及 松屋会記は大和の茶会記録となる。
中でも多賀新左衛門の動向や 織田信重家中を知ることが出来る津田宗及の自会記 8 他会記 7 は強く勧めたい。

特筆すべきは宗及自会記で 一次史料に於ける藤堂高虎の初見記録も含まれている。
つまり天正十二年(1584)12 9 日昼に彼は秀次と共に茶会に参じている。管見の限り これ以前に藤堂与右衛門の動向を示した一次史料は存在しない為 高虎の登場はいきなり 茶会の場 となるのが面白い。

また宗及他会記では 信長の甥 御坊 が亡き勘十郎の子息である事が記されている。これが七兵衛尉信重の初見であり 読むべき理由が詰まっていることがわかるだろう。

また松屋会記では大和衆の動向を見ることが出来るので 彼らを知るに有意義である。

今回は 7 8 9 巻を紹介したが 北野大茶湯之記 山上宗二記 宗湛日記 利休百会記が収まる 6 も必読である。

多聞院日記索引

余人索引を軽々に見るが 索引こそ人類智の英知である。
私は言継卿記の調査で 心底索引が欲しいと思った。それは大和豊臣家を調べる上でも同じ事で 時間を掛けたくは無いな と思って居た。
そこで出会ったのが 図書館送信で読むことが出来るこの索引であった。
横浜一庵と小堀新介が 如何に奉行として働いたか。それは索引だけでも 感じることが出来る。
高虎は出て来ないので この辺はポイントですね。

浅井氏三代文書集

小和田哲男先生の代表作の一つが この文書集である。
亮政から長政までの三代を 年次毎と年次未詳に纏めて居るのでわかりやすい。

藤堂家では九郎左衛門宛知行宛行状が興味深い。
また有名な藤堂与吉宛感状ではあるが これは最近後世の創作 復元 レプリカでは無いか と思うようになっている。要注意である。

滋賀県中世城郭分布調査. 7 (伊香郡・東浅井郡の城)

今回の国会図書館 IT 革命により 滋賀県中世城郭分布調査も個人送信で閲覧することが出来るようになった。
藤堂家や高島郡を扱うなかでは 5 旧愛知 犬上郡の城 8 高島郡の城 も取り上げたいが ここでは 嶋記録 が収まる 7 を紹介する。

読めばわかるとおり 嶋記録は後年に編纂された史料である。しかし そこに収まる書状は比較的有用な史料として 様々な先生が扱っている。
もちろん書状も気をつけねばならぬ。太田浩司先生の 江北における土豪 一揆結合 の展開― 嶋記録 所収文書の史料批判をめぐって 長浜歴史博物館年報 1 1987 に依れば 一部改変が為されているようだ。

とはいえ戦国時代中頃の中郡を知る上では 外せない史料である事は変わらない。気をつけて読みましょう。

宗国史.上

藤堂家の編纂史料として欠かせない史料が 第二次編纂事業で完成した 宗国史 である。上下巻あるが まあ津藩研究でもしない限りは上巻で事足りる。
しかし文体により解読難易度は高い。まだ 高山公実録 の方が遙かに読みやすい。
また慶長以前の高虎動向は そこまで読む必要は無いかな と感じる一方で 功臣年表は必読である。

高虎の先祖に関しても非常に疑問を感じるところが多いが どうやら菊岡如幻が歴名土代を閲覧し 景能から景任に至るまで十二名の叙任を確認していたとの記述は非常に興味深い。

北陸史学(27)

1978 年の刊である。そこから紹介したいのは 豊臣期-武将の軌跡–多賀秀種の場合 / 奥村哲 という論文だ。
早い話が この論文を読めば多賀秀種がよくわかる。
特に藤堂家との関わりや多賀系図は必見で 多賀氏に対する理解が深まりました。大和豊臣家を知る上でも欠かせない論文である。

下敷きとなった史料は私も史料編纂所で閲覧しましたがね 自身の読解スキルの無さだけが露呈しました。

駒沢大学史学論集(27)~ (29)

さて一連の論集は 1997 年から 1999 年までの論集である。これらには小竹文生氏の羽柴秀長論考が掲載されている。

1997 年の 27 には 羽柴秀長文書の基礎的研究 1998 年の 28 には 但馬 播磨領有期の羽柴秀長 1999 年の 29 には 羽柴秀長の丹波福知山経営– 上坂文書 所収羽柴秀長発給文書の検討を中心に と言った具合の三部作である。
これらにより羽柴秀長という人物を深く知ることが出来る。
ウィキペディアやしょうもない動画を見るより 遙かに有意義だぞ!

管見の限り発表されている小竹文生氏の論文は この三本の他に二本存在する。
まず 1999 年の 豊臣政権と筒井氏– 大和取次 伊藤掃部助を中心として 地方史研究。此方はデジタル化されておらず 国会図書館まで足を運ばねば読むことは出来ない。私は既に読んでいるが。
次に 2000 年の 豊臣政権の九州国分に関する一考察–羽柴秀長の動向を中心に (近世社会の成立と展開) – (中世社会の展開と近世社会の成立) である。こちらは駒澤大学の学術機関リポジトリにて閲覧することが出来る。

何れも政権の大和支配や 秀長の権力を考える上で重要な論文であるから必読だ。

終わりに

如何だったでしょうか。
たぶん紹介したもの全て読もうとなると かなり時間が掛かります。
ここから本の虫 活字中毒になって更に読み漁りましょう。

時間が無い?
大丈夫。年明けまで待てば 最新技術による全文検索が可能になります。
すでに 次世代デジタルライブラリー で試験運用が行われて居ますが この AI による OCR 技術は研究の効率化に抜群です。
既に冬以来 手放せないツールとなっています。

私も年明けが待ち遠しいのです!